リンク: Magnolia - Simple Enterprise Content Management.
リンク: Nuxeo: Nuxeo - Open Source ECM.
現時点では、エンタープライズレベルのコンテンツ管理を行うオープンソース製品として、Alfrescoが最も完成度が高く、また最も将来を期待できる製品であることはほぼ間違いないと思います。しかし、他の選択肢が全く存在しないというわけではありません。
今回はそのうちから二つの製品、MongoliaとNuxeo ECMをご紹介したいと思います。
オープンソースの世界にはそれこそ数えきれない程のコンテンツ管理ソフトが存在します。ただし、その多くはWebサイトの構築や管理を目的としたものであり、企業内情報の取り扱いに特化したもの、言い換えれば、WordやExcelのファイル等「文書」の取り扱いが得意だったり、高可用性への対応やスケーラビリティが確保されている製品というものは非常に限られています。
その限られた製品の一つ、MagnoliaはJavaによるオープンソースCMSとして2003年頃から公開されている製品です。2005年には文書管理(Document Management System)としての拡張を実現していて、今ではBusiness Process Editionという名前で文書ベースのBPMへの対応を計っています。Documentum由来のAlfrescoが当初から文書の単位をターゲットにしていて、今まさにWebの世界へ向けて再拡張しているのとちょうど対称をなしていると言えるかもしれません。またこの製品はJSR−170に準拠しています。Java実装のCMSが一般的になるにつれてこれらの標準技術が普及していくことは、非常に心強い限りです。
次にNuxeo ECMですが、こちらはもともと(Javaではなくスクリプト言語Pythonベースの)Zope上に構築されたNuxeo CPSという製品でしたが、近頃Javaへの完全移行が宣言されました。Pythonは非常に優れた言語で、高い生産性を誇る上に工夫次第ではエンタープライズレベルのアプリケーションも構築可能であるとされていますが、やはり採用製品が少ないためミッションクリティカルな要件に応えるためのノウハウの集積などの面ではJavaに及ばない面があったのではないかと思います。(PythonによるCMS関連の製品には他にPloneという非常に有名かつ高機能なものが存在します。こちらも非常にパワフルなツールですが、やはり企業向けという意味では構築・運用のノウハウをもつ人材の確保が困難ですし、複雑で単品で納入する製品という形にはなかなか持っていけないのでhないかと思います)Nuxeo CPSは非常に評判の良いソフトでしたので、Javaによる各種標準規格への準拠や他システムとの連携の事例などが出てくると非常に面白いのではないかと思います。
それにしても、これらの製品群をみるにつけて、オープンソースモデルの生産性の高さを実感します。(時折誤解されている方もいらっしゃいますが)それはボランティアの開発者の参加があるからではなく、同じくオープンソースのポリシーをもつ各種ミドルウェア・コンポーネントを効率良く活用できるという点にあると思われます。AlfrescoやNuxeoのチームの様に、文書管理やコンテンツ管理の経験が豊富なチームの場合、作るべきシステムの姿がかなり明確に見えているのでしょう。だからこそ、部品の調達が容易なオープンソースの世界では製品の完成までが非常に迅速なわけです。
Alfrescoもまだまだ成長の過程にあるソフトウェアです。開発ロードマップには非常に魅力的な文言が並んでいますし、我々がつき合ってきたこの一年近くの間にも、そういった目標がどんどん現実化してきています。もちろん製品サポートの立場からは、安定性の追求も決して怠ることなく続けていますが、新機能のことを考えると次のバージョンが待ち遠しく思えてなりません。
(文責 Ishii Akinori)