2011年11月18日金曜日

ケースマネジメントと管理会計

http://www.wdc-jp.biz/jasmin/2011_fall/sub.php?open_key=D3-4: "BPMと記録管理の連携方式の考察"


今年からJIIMAのECM委員会に参加させて頂いているんですが、最近そのメンバーの一人であるNRIワークプレイスサービスの松本さんとケースマネジメントについてのお話を色々とさせてもらっています。


松本さんはACMなどで話題になりつつあるケースマネジメントの考え方が、主に記録管理の分野で銀の弾丸扱いされているのではないか、という懸念をもたれているそうです。


確かに、ケースマネジメント的な考え方というのは、ある仕事の単位の中での業務の手順その他にバリエーションが多く柔軟な対応が求められる場合において、非常に強力な解決策となるものですが、(システム的なサポートは適宜行うとしても)、やはり事案横断の分析の可能性やフローを固めることで生まれる自動化などの発展性を犠牲にする面があると思われます。柔軟性を得たいがためだけに安直にケース単位の情報・記録管理だけをやればよい、という風潮になってしまうことは避けるべきだ、というのが松本さんの意図であると思います。柔軟性にともなうトレードオフというのはシステムの世界ではよくある話ですので、違和感のないストーリーと言えるのではないでしょうか。


さて、では何か他に対案があるのか、ということになりますが、そこで松本さんは「ユニット」による業務の分割、とその管理単位のBPMへのマッピングという手法を提唱されています。(リンク先はその発表第一弾の概要です)


詳細は私もわかっていない部分もあるので割愛しますが、ここでいうユニットとは(おそらくは野村総研で採用されている)管理会計上の最小単位ということのようです。「プロセス」は「部門」を横断しますが、その構成要素たる「ユニット」は「部門」の中に収まるように設計されていて、計数的な報告・分析はすべてこの「ユニット」単位で行うことが義務づけられている、という世界観です。組織変更の場合は「部門」間で「ユニット」を引き渡す形になるのだそうです。


ここまで割り切った「ユニット」が定義され、実際に管理会計レポートのための報告体制までできあがってる企業というのは非常に限られていると思いますが、仮にこうした体制ができているとしたら、それを前提としたBPMが従来の色々な課題を回避できうる、というのはかなりあり得そうな話だと思います。この成熟度まで行くのが難しい、といわれれば、それはもちろんそうですが、記録管理や業務プロセス管理というのは安全性の向上や業務効率の向上という具体的なメリットを生む行為であり、意思決定サポートのためとして考えられてきた管理会計制度の整備が、具体的なパフォーマンス向上につながるという絵を見せることができるのであれば、それは非常に価値が高いことだと思います。


今後とも継続的に松本さんの取り組みに注目し、できる限り一枚かませて頂こうと考えています。


(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)












2011年11月11日金曜日

Alfresco Community 4.0.b Release

Alfresco Community 4.0.b Release Notes - alfrescowiki:


仕事が立て込んでいてまた一週間放置してしまいましたが、恒例のランチミーティングにかこつけて投稿します。


Alfrescoの新バージョン4.0系のお話をしっかりとご紹介するのが遅れてしまっていました。


これは非常に大きなバージョンアップで、エンドユーザ向けの機能強化も技術的な裏側の実装も大きく進化しています。


エンドユーザ向けの大きなところでは、



  • HTML5によるブラウザウィンドウへのドラッグ&ドロップ アップロード

  • 一覧画面からの属性(名前とタグ)直接編集機能

  • ユーザに対するフォローやコンテンツに対するいいね!などのソーシャル機能

  • コンテンツ内ファイルの外部サイト(SlideshareやFlickr、Youtubeなど)への配信と通知(Twitterなど)の機能


があります。


これまでAlfrescoは従来型のECM製品がActiveXなどのインストール前提コンポーネントを利用した「無理矢理なドラッグ&ドロップ」の弊害に苦しめられてきた反省から、ブラウザへの直接ドラッグ&ドロップの機能を持たせず、それを補完する技術としての仮装ファイルシステムに注力してきたという経緯がありました。しかし、今度のバージョンからは技術的な負債を抱え込むことなく両方のニーズに応えることができるようになります。(仮装ファイルシステムの中でも特徴的な機能であったCIFSアクセスについてもクラスタリングに対応するなど、「裏側」の強化が同時になされています)


また、ソーシャルコンテンツマネジメントのコンセプトを表明してからの最初のメジャーバージョンであるため、それにまつわる機能も幅広く実装されています。社内にソーシャル的な仕組みを持ち込むという意味での、Commenting(コメント)、Rating(星付け)、Liking(いいね!)、Follow(フォロー、購読)などの機能だけでなく、社外ソーシャルサイトとの連携機能も大幅に強化されています。


裏側の強化も従来のバージョンでは中途半端にWCMコンポーネントに依存していたところが作り直されていたり、Luceneへの直接的な依存をSolrで置き換えることで解決しスケーラビリティを強化したり、とかなり大きな手術がなされています。印象としてはShareを実装した当時の技術的な前提条件がこの数年の間で変化し、ある種の歪みとなっていた要素が一気に取り払われた感があります。技術者の方はRelease NotesのRepositoryの項目あたりを見て頂くと、よく理解して頂けるのではないかと思います。


新ワークフローエンジンのActivitiもユーザからも見える派手な要素ではありますが、これはまた独立性が高い話題ですので、近いうちに記事をわけてご紹介できればと思います。





(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)