2014年7月8日火曜日

文書管理と図面管理

最近、図面管理についてのご相談を頂くことが増えてきました。がっちりしたPLM(製品ライフサイクル管理)やPDM(製品データ管理)のコンセプトを実装した製品は複雑で高価、顧客にとって不要な機能を包含したものになりがちなため、文書管理ソフトウェアを使って図面を管理できないか、という着眼点からのお問い合わせ、というのがある種のパターンになりつつあります。



非常に大雑把なくくり方をすると、PLMをゴールとした場合のCAD図面の管理体制には以下の様な成熟度が考えられます。(図にするのであれば高い成熟度を上に持ってきたいところですが、Markdownで書いているので、ひとまず項番=Lvという解釈で下へ行くほど成熟度が高くなります)




  1. 図面ファイルを単なるファイルとして管理し、メールやファイルサーバで管理

  2. ローカルではCADツール付属の図面管理機能で図面番号などの属性を管理

  3. シンプルな図面管理ソフトウェアを使って共有

  4. PDMツールを導入し、パーツ品番の管理や各種採番などもシステム化

  5. PLMツールを導入し、関係各所とも一貫した情報管理を実施



紙図面を脱却し、パーツ情報の共有や生産情報などの基幹系システムとの連動を実現できるようなシステム的にユニークで一貫したIDの管理など、図面情報の高度化が希求されています。



IDの管理や図面全体に割り当てられるような図面番号や顧客名などの属性情報の管理などについては、まさしく文書管理やECMで行われていることと同じ機能が求められています。そのため、高価なPDMなどを導入しなくても当面必要な管理精度や検索の利便性などについては文書管理でもできそうだな、という印象を持たれる方も多いわけです。



しかし、パーツの管理や、パーツそのものに付加された属性まで管理しようとすると、なかなかに複雑になります。ECM製品であれば文書同士の関連情報を保持することも可能なので、サーバ内でパーツの図面と製品全体の図面を結びつけておくこと自体は可能ですが、CADファイルの中身を書き換える機能があるわけではないので、それを持ってパーツ側での仕様変更を製品図面に反映させる、などの機能を実現するのは無理があります。(せいぜい、パーツ図面の更新時に利用してる製品の一覧を表示するくらいでしょうか)



文書管理ソフトウェアやECM製品は、各文書の内部構造に踏み込んだ処理はあまり得意ではありません。



全文検索インデックスをつけるというのがこれらのツールにとって最も内部に踏み込んだ処理、と言っても良いかもしれません。もちろん、文書管理ツールで図面管理を考えておられる方が関心を持っている、プレビューやサムネイル作成の機能などもファイルの中身を使っての処理ですし、Excelの特定セルを読みこんで属性値として割り当てるとかPDFの属性情報を吸い上げるなんていう処理もありえます。しかし、これらの機能も、本体そのものはそのままの形で保持することを前提として、プレビュー用の補助ファイル(レンディションと呼びます)や属性値を周囲に配置することを目的としたもので、図面の内部へ変更を自動反映していくような位置づけのものではありません。



では、図面管理は専用のソフトウェアで行うべきであり、文書管理ソフトウェアやECM製品を無理矢理適用するのは間違っているのでしょうか? 



(例によって議論の幅が拡がり過ぎてしまいそうなので、ここから先は文書管理ソフトウェアというよりはECM製品を前提に続けたいと思います。弊社には文書管理ソフトウェア並に低価格なECM製品もありますし!



図面管理分野でECMが活躍する局面



上述したPLMを頂点とした図面管理は、製品を設計し、材料を調達、製造して、販売し、(場合によっては)保守をする、というストレートな製品出荷を前提としています。そして、製品の種類が多ければ多いほど、効果が大きいと予想されます。また、どちらかといえば製品のライフサイクルが短く、どんどん新しいものを出荷する、というスタイルに向いているとも言えるのではないでしょうか。



しかし、製造業にも色々なスタイルがあります。例えば、私の実家は天井クレーンの製造販売を行っていますが、基本的には個別受注生産で、どの案件にどのパーツを使ったのかという情報は必要ですが、そのパーツも他社からの購入品であるため個別に図面を管理したりはしていません。では、図面管理の必要が無いかと言えばそんなことはありません。顧客毎、案件毎の管理をロングスパンで行う必要があります。クレーンは何年も使い続ける装置ですので、初期設置時はなかった安全装置を後で取り付けたり、古くなった部品を新しいものと交換する際に従来の部品が手に入らず新しい互換品を採用したり(あるいは互換品がなくて修正工事を行ったり)ということをしていきます。これらの情報が散逸してしまっては都合が悪いわけです。



もっと大きなビジネスをしている製造業でも、標準品の図面管理と、案件毎のカスタマイズによる施工図面を二重に管理せざるを得ないケースはたくさんあると思います。図面の内部に踏み込んでCADの内部で扱えるパーツ間の関係などにフォーカスするのではなく、図面の外にある(あるいは業務的な意味で設計の外にある)情報とのリンクを取り扱いたいのであれば、ECM製品を利用する意味合いが出てきます。



非常に大雑把なまとめ方をすると、製品と部品の関係をメインで取り扱いたいのであれば図面管理、製品と案件(工事)などの関係に着目する必要があるのであればECM製品を検討するのが良いのではないかと思います。



実際には他にも色々なケースが考えられますし、そういった事例もいくつか持っていますので、ご関心をお持ちの方はお気軽にお声がけ頂けると幸いです!



(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)