2015年4月8日水曜日

AIIM Conference 2015 今年も行ってきました

AIIM Conference 2015 - About the Event: "Digital Transformation: Embrace the Chaos"

(Via aiim.)

また、かなり間があいてしまいました。その上、カンファレンス出席からも結構な時間が…

恒例の定点観測に

JIIMAのECM委員会からの派遣という形で、今回も米国はAIIMのイベントに行って参りました。今回で3回目です。(今回からは立ち場が委員長なので、自分を派遣するっていうのが、ちょっと微妙な気もしないでもなかったのですが、年度末の忙しい時期に身体を空けられるという点でご理解を得ました)

今回の会場はサンディエゴです。過去2回が、ニューオリンズとオーランドでしたし、次回もニューオリンズらしいので、この手のカンファレンスの会場としてはある種の定番ということなのかもしれません。暖かい、良いところでした。

カンファレンスの全体については、今では電子配信されている月刊IMにそのうちレポートが載る予定ですので、特に気になったところだけご紹介できればと思います。

ECMは斜陽産業か?

過去参加した2回では、記録管理は死んだ記録管理という実験は失敗に終わった、なんていう煽りを含んだプレゼンがありました。今回も、ECM悲観論に対するカウンターの様な発表で面白いものがありました。ECM Is Not Doomed for Failure、リンク先資料の15ページ目「『ECMの死』の歴史」、です。

今まで3回、ECMの終わりを告げるがあった、と。

最初の波はSharePoint

高額な伝統的ECM製品群に比べて桁が違う価格帯の製品で、しかも当初は「簡単」という触れ込みでした。確かに、データベースやアプリケーションサーバの設定をそれぞれ行った上に高可用性を実現するミドルウェアやユーティリティの設定まで行わないとインストールすらままならない、いかにも手間がかかりそうな製品と、Microsoftとの間に適切な契約さえあればウィザードにチェックをつけるだけで導入できそうに見えるSharePointの比較において、比較的「簡単」であるということに嘘はありません。管理者に求める人物像やその所属組織などを勘案すると、このメリットは今でもなくなってはいないと思われます。

しかし、ECM導入の難しさは何も技術面、それもインストール時のそれだけではないので、SharePointが安価で簡単に手に入るようになったからと言って、ECM製品の存在意義がぐらつくようなことは結果としてはほぼ起きなかった、と言えそうです。

(このテーマについては、AIIMが積極的に「ECMとしてのSharePoint」という議論をリードしていった経緯であるとか、日本において文書管理系の利用があまり進んでいないように見えることなど、論点はまだまだ色々ありそうですが、ここでは割愛します)

次の波はソーシャル!

AIIMなどの情報源にあたっていると、ECMの利用方法としてコンプライアンス対応や統制(コントロール)方面の「堅い」利用法と、コラボレーションやエンゲージメントなんていう生産性向上や情報共有などの「柔らかい」利用法の2つが併記されることが多いように思います。また、元々は堅い基盤だったもの土台として、柔らかい方へ手を伸ばしていった格好である、という点も業界の人にはある程度共有されている見方だと思います。

まず、堅い要件なども安定し、説明責任も果たしやすい適応領域があり、エンタープライズワイドにコンテンツ管理を一本化するという理念を追求したり、適用範囲を広げてビジネスを拡大するために、その後の展開があった、と。(ソフトウェアビジネスとしてのECM業界の変遷を眺めた場合のことを言っています)

折角入れたシステムも使われないと意味が無く、堅い仕組みは面倒くさいので余程のモチベーションか強制力がないとなかなか使ってもらえない。だからこそECM業界ではAdoption、利用・受入の推進が常に問題となっていました。

ソーシャル系の技術はまさにそこに対する回答であると同時に、システムアーキテクチャ自体が堅い要件前提で中央集権的に作られた伝統的ECM製品のそれを否定する可能性があるものでした。その点で、ソーシャルソフトウェアがECMの死を呼ぶ、という話には一定の説得力があったのですが、YammerにしてもJive!にしても現時点ではそれほどの影響力を発揮するポジションには着かなかった、ように思います。

今はクラウド、ファイル同期の時代

前回のAIIMカンファレンスでも度々話題になったDropbox問題です。エンタープライズ系でもDropboxが優勢というニュースが流れたり、box社の展示面でのプレゼンスが落ちて、ECMベンダのEFSS エンタープライズ・ファイル・シンク・アンド・シェア ソリューションが出揃ったり、という変動もありましたが、やはり今アメリカのレコードマネージャや文書管理系ソリューションのプロバイダが最も気にしているテーマはこれだろうと思います。

プライバシーやコントロールの問題ももちろんありますが、利用推進という意味で強力なソリューションであることは間違いありませんし、ECMの様な(社内)中央的な考え方とスタート地点ではかなり距離を持っているということが逆に「社外とのコラボレーション」という積年の問題の解答たり得ることの期待感に繋がっているという印象もあります。

そういう意味ではECMリポジトリそのもののクラウドオファリングよりも、EFSSの方がより喫緊のテーマとして扱われている印象でした。(単なるクラウドデプロイメントは今更話題たり得ない、という気もしますが、やはりECM業界は製薬金融をはじめ法的要件がややこしいところも多いので、それほど単純ではないはずなので)

(この件に関してはもちろんCmisSyncとの関係を語りたいところですが、長くなりすぎたのでやはり割愛します)

そしてアナリティクス

AIIMは基本的にはミーハーというか、新しいもの好きな傾向があると思うのですが、それにしてもインサイトであるとかアナリティクスというキーワードの台頭ぶりは印象的でした。

情報カオスに対する統制、対応策として、技術面からできることを考えていくと、自然言語処理や機械学習などの領域との接近がもっとも自然である、ということだと思います。

現行のオファリングとしてはやはりIBMのバンドル商法(?)がコンセプトの完全性という意味では先行している印象ですが、今後蓄積する情報とそれを分析するための手法ツールの進歩のスピードを考えるとそのアドバンテージは現時点ではなかなか決定的なレベルにまでは到達しえないのではないかと思います。

アナリティクスは、そこから引き出した結果を行動に結びつけなければ意味が無いわけで、文書管理領域におけるそのルールメイキングというのは、中々タフな議論を要求するものであるに違いありません。そういう意味では、素直に今後数年の展開が愉しみである、と思える視察だったと言えそうです。

(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)