2010年4月6日火曜日

アプリケーションドリブンをどう訳すか

Alfresco関連のドキュメントを翻訳している同僚から、Application-driven purchaseという表現をどう訳したものか、という相談を受けました。


ニュアンスとしては、「(単純なインフラの整備としてなどではなく)実現したいアプリケーションがまずあって、その必要不可欠な要素としての購入」といった意味なのではないかと思うのですが、なかなか上手い訳語が思いつきません。恐らく対語というか同じレベルの表現としてはCost-driven purchaseなんかがあるのではないか、という意見も社内では出てきたのですが、コストドリブンよりもアプリケーションドリブンの方が日本語としてはより意味が通りづらくなっているのではないかと思います。


アプリケーションという単語は、個人的には初めてコンピュータに興味を持った小学生の時に知った言葉で、当時はオペレーションシステム(基本ソフトウェア)の、それこそ対義語として語られることが多かったように思います。しかし、今、我々が英文から翻訳をするときにアプリケーションを「応用ソフトウェア」として訳すべき状況というのはほとんどありません。(応用ソフトウェアというのはあくまで、アプリケーションソフト、の訳語であってソフトという単語抜きのアプリケーションの訳語の議論に持ち出すのはおかしいのかもしれないんですが、ソフトウェア以外でアプリケーションという言葉を日本人が使うことは極めて稀だと思われるので・・・)


それでも、アプリケーションドリブンなどの形でアプリケーションという単語をカタカナで書いてしまうと、オペレーションシステムではないもの、という理解をされてしまうのではないかという気持ちが拭えませんでした。


とはいえ、アプリケーションという語自体を使わない方法を思いついたわけではなく、アプリケーション本位の投資、アプリケーションを重視した購買、アプリケーション起点の購入、など候補の中から選ばざるをえないのではないかというのがひとまずの結論です。


もう少し文脈を紹介しますと、ECMの特徴を説明する流れの中で、「高コスト」であることの説明として、アプリケーションドリブンで価格が高いという言い方をしているところで、この表現に出くわしました。単に従来のECMの価格の高さだけを指摘するのでもよいのかもしれないんですが、(そして実際私はこの部分を翻訳版から削ってしまうことすら主張したのですが)、できれば原文の意図を伝えたいということでこの議論になったわけです。


また、IT投資の分類法として、法対応などの外部要因に対する投資・インフラ整備などの守りの投資・差別化要因を生み出す戦略的な投資、などに分類するやり方がありますが(守り、の部分はインフラと基幹業務アプリのメンテナンスを分ける場合もありますね)、「Application-driven」にはある種の「戦略的な投資」というニュアンスもあるのではないかと考えました。しかし、アプリケーションを「戦略的な投資」と言い換えてしまうのは行き過ぎだと思うのでこのアイデアは取り下げました。何か良い表現が見つかるといいのですが。


(Ishii Akinori IT−Coordinator)