IT経営会議 浜名湖フォーラム2015 に行ってきました。これで3回目の出席になります。
ECMもEIPもBPMも、一般にはアプリケーションとして扱われているにもかかわらず、特定の業務だけをスコープにIT投資を考える場合にはなかなかメリットが訴求できない基盤/プラットフォーム/ミドルウェア的な技術です。これらの技術がもたらす利点を以下に投資企画策定時に理解し取り込んでもらうか、という検討をしている中でIT投資マネジメントを研究されている方々の取り組みを知り、ほぼ飛び入りに近い形でカリアックにお邪魔したのがきっかけでした。(IT資産価値研究会にもそこからのご縁で参加させて頂くことになりました)
自分の発表について
さて、今年は色々と忙しく、昨年以上に発表の準備に時間をかけることができませんでした。昨年はシステムダイナミクスを使って、疎結合により柔軟性を担保した仕組みの方がモノリシックな仕組みよりも、たとえ初期費用で上回っていても中長期的にはメリットが出る、というお話をさせて頂きました。(厳密には、メリットが出る時の条件を検討する枠組みだけ作った感じでしたけど)今年はその延長で、クラウドとオンプレミスを比較し従量制と定額制の組み合わせの最適値をさぐるようなお話を考えていたのですが、思った以上に要素の数が大きく、なぜそれを考えたいのか、という説明だけして撤退、というありさまでした。
ここでも簡単に説明させて頂くと、
- クラウドとオンプレミスは課金モデル以外にも違いが大きすぎて、現在一般に行われているTCOの比較は誠実な検討とは言えないのではないか
- クラウドによりスモールスタートを「スタート」しやすくなったが、適用ユーザを広げるとリニアにコストアップになるので結局「スケール」しづらくなってはいないか
イージフではこれまで一貫してロックインされないことを重視し、オープンソース製品の紹介を進めて来ました。私はその経緯もあって、柔軟性とは「将来における選択肢の幅を狭めないこと」であると考えています。今年の発表ではそのあたりのバイアスをうまく整理しきれず、研究会のリーダーである向さんから、クラウドの柔軟性と言われれば聞き手はスケーラビリティのことだと思うよね、という至極順当なご指摘を頂きました。まったくその通りなので、忘れずに反映しないと・・・
(あと発表内容が難解すぎるので飲み会で語ったIngressとモチベーションの話の方をテーマにしてくれれば良かった、というお言葉を数度頂きました)
他の方の発表について
今年も多岐に渡る発表がありました。どこまでこうした場でご紹介していいのかわからないので簡単にキーワードとそれらについての雑感だけ、メモとして残しておきたいと思います。
- デザイン思考 ……アイディアの出し方そのものをサービスのネタにすることの難しさや面白さについて、具体的なシーンを元にしたお話を多数聞けたのが有意義だった。
- IoT ……CPS(サイバーフィジカルシステム)という表現から迫ったほうが穏当? EDIの置き換え文脈もここに含まれるというのが面白かった。FAXの代替は電子メールではなくECモジュールかも、など
- 地域支援 ……コアとなる中堅・中小企業の支援。新しく白書もでた小規模企業の支援。国などからの制度設計の視点ではROIを意識せざるを得ないが、現場は「個」の特徴に注目せざるを得ないし、成功事例はその個性を意識したところにしかない
他には、栗山先生の一連の研究にあるプロジェクト成功可否に大きな影響を与える要素としての「経営者」というお話が、改めて非常に示唆に富んだものだと思いました。IT資産価値研究会も単なる財務的な評価ではなく、意思決定に資するようなより実質的な評価を模索しているわけですが、そこには客観的な確からしさが担保される指標だけでは不十分である、という葛藤が常にあるように思います。プロジェクトの成功要因として「経営者のコミットメント」を挙げるのは、お手軽だし正しい。しかし、ワイルドカード過ぎて空虚な話になり勝ちなわけで、そこを掘り下げていくというお仕事の過程をお聞きして、どこか似たような葛藤を抱えておられるような印象を受けました。いわゆるアートとサイエンスの狭間にはありがちな話なのかもしれませんが、なんとか次の締め切りまでには自分の方も何か形にしたいものだと思います。