EFSSって?
Enterprise File Sync & Shareの略です。エンタープライズ ファイル共有と同期。我々文書管理を専門とする人間にとってはここ数年頻繁に目にするようになったキーワードですが、一般にはそこまで普及していないのではないかと思います。要するに業務で使えるDropboxみたいなツール全般のことなんですが、例によってくどく説明したいと思います。
まず、本題に入る前に「エンタープライズ」という用語について確認したいと思います。もともとはざっくりと大企業向けと解釈しておけば間違いのない言い回しでしたが、実際にはいくつかのニュアンスが混在したものになってきていると思います。
- 規模が大きい(データ量や処理能力など機械的な意味で)
- 高い可用性が求められる
- 業務用である
- IT部門によってコントロールされる
今回の議論とは直接関係ありませんが、もう一つ、ERPやECMの世界では重要な視点があります。
- 中央集権的に全社統一で利用される
話をEFSSに戻します。これは最近できた言葉なので、そこでいうEnterpriseも最近強調されている語感を意識して捉えるべきです。つまり、ここでいうEnterpriseの対義語はDepartmentではなくConsumerであるということになります。
Enterprise vs Consumer
数年前から日本ではSIerのキャリアパスへの不安感やWeb上のサービスを行ってるベンチャーの急成長もあって、Webネイティブな技術を牽引しているエンジニアとSIerの多重下請け構造に属しているエンジニアの間の断絶が度々問題になってきました。Web系、という言い方は業務系のシステムも世代はともかくとして同じようなWeb関連の技術を利用することが多くなってきているため、あまり通りが良くないということもあり、横文字を多用する文化圏ではConsumerizationなんていう言い回しも盛んに使われていました。それまでは、業務向けに開発され磨かれてきた技術が徐々にコモデティ化する中で一般消費者向けにも利用できるようになるというダウンサイジング的な技術の伝播が基本だったのに対し、一般消費者向けに開発された技術の方が業務向けで使われている技術よりも先行しだしている、という状況を説明する用語でした。
Dropboxなどもその典型になります。今ではEnterprise向けのサービスも展開されていますが、基本的には個人利用をベースとして構築され成長してきたサービスです。
冒頭でリンクを貼った記事では、企業のためのEFSSと、現状利用されているファイル共有サービス(Dropbox、OneDrive、Googleドライブなど)を比較するため、後者をCFSS、 Consumer-level File Sync & Shareと位置づけています。EnterpriseとConsumerを対比させているわけですね。
面白いのは、「電子メールにファイルを添付して共有」などの技術的にはさらに古い世代のものも彼ら(?)にとって「あるべき姿」であるEFSSとの対比の意味でCFSSに含まれている、という点ですね。
このBlogでも米国のカンファレンスでDropbox問題という言い回しが一般化していた、というようなエピソードをご紹介させて頂いたことがありましたが、単に黒船が来て場当たり的に反応しているのではなく(多分に見栄が含まれていると思いますが)「もっと大きな視野で解決すべき課題を捉え、それが解決できるソリューションとそうでないものを峻別しているのである」という姿勢には敬意を払いたいと思います。
なぜEFSSが必要なのか
なんとなく想像がついてしまうこと以上の視点はとくにないのですが、(いくら日本が立ち後れていると言われていても)企業内の情報はどんどんディジタル化しています。ディジタル化するということは、余程気を付けない限り、利便性やコストメリットと共に以下の特性を抱え込むということでもあります。- すごい勢いで増える
- 簡単にコピーされる
- 簡単に消せる
従来であればECMリポジトリが、この問題に対する一つの解だったわけです。しかし、ディジタル化の波は取り扱うデータの範囲をどんどん広げていますし、社外とのディジタルデータでのやり取りも増える一方であるため、社内に抱え込んだリポジトリだけでは追いつかなくなってきている。そこにさらにDropboxのようなCFSSがシャドーIT(会社のコントロール下にないIT技術利用)的に利用されはじめてしまっているわけです。
同期ツールの利便性は高く、使い勝手の悪い仕組みの利用を強制させるのは困難です。そのため、使い勝手として同等な、しかし安全な仕組みを企業側から改めて提供していく必要がある、というのがEFSSが必要とされる理由になります。
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