2014年6月3日火曜日

ECMサミット2014/MAYに登壇しました

ECMポータル : ダウンロード: "ECMサミット2014/MAY(2014年5月28日開催、JIIMA東京セミナーA5セッション)"



先週28日にJIIMAセミナーでお話をさせて頂いた内容を少し補足したいと思います。



基本的には、4月のAIIMカンファレンスの報告なので、
* 情報カオスというキーワードがでてきたこと
* そのソリューションの1つとして情報ガバナンスが位置づけられていそうなこと
* 言い換えると、圧倒的な情報の「量」に対して戦い方の工夫が求められている、ということ



というのがメインのメッセージではあったのですが、その背景を理解するためのキーワードとして、SoE システムオブエンゲージメントについても、お話しました。



性格的に、マーケティング目的で薔薇色の言説のみを積み上げることができないので、やや露悪的な表現を使ってしまったため、結果的に飲み込みづらいお話になってしまったのではないかと反省し、(どれだけの人が見て頂けるか不明ですが)ここにも補足の記事を上げておこうと考えました。



SoEは通常、従来型のSoR システムオブレコードとの比較で、無機質な記録(業務上の数値・事実など)の取り扱いを主目的とせず、有機的な人と人との繋がりを活性化するようなシステム、例えば社内SNSやコラボレーションツールのようなもの、と説明されます。要するに、これからはソーシャル・モバイル・クラウド(・ビッグデータ)だ!と言い募るための語彙でもあるわけです。ただ、個人的にはこれを単なるバズワードだといって流してしまうのはもったいない、と考えている部分もあります。講演では少しでもその部分を掬い上げたいと考えました。



その結果として盛り込んだ発言が、
1. エンゲージとは「歯車」のかみ合いである
2. 技術トレンドは分散/集中など振り子の様に移り変わる、システム/人の間の振り子が今「人」側に振れてきている
3. SoRとSoEは従来から言われている基幹系と情報系という表現とかなりの部分で被る(が、少しだけニュアンスが異なる点もある)



の3つです。今振り返っても、いきなり何を言い出すんだ、という感じですね。



まず、1.の「歯車」について



「エンゲージメント」という言葉自体はビジネスの世界でも結構前から使われています。主に人事のジャンルになるんではないかと思います。うちの社長もエンゲージメントのフレームワークを全社ミーティングでの発表で参照したりもしていました。ただ、やはり日本語としてはどうしても「婚約」という訳語が一般的ですし、人事の話も基本的には愛社精神と言いますか、愛着心をテーマとしています(満足度ではなく愛着心、が新しい点であったと思います)。



愛着心があった方が、色々なことがうまくいく。ガイ・カワサキさんの「聴衆を魅了する方法」の第一が好感を持たれることであったことにも通じますし、好きこそ物の上手なれ、という言葉もあります。なので、素直に愛着心の話と受け取ってもいいところなのですが、私自身の趣味としてはもう少し工学的に理解したい。



原語のEngagementには歯車の噛み合わせという意味があります。(壁に柱を埋め込むのもengageだったような気もします)。SoEという言い方で、新たなシステム投資を提唱する際、そこにあるのは漠然とした「皆、もっと会社(仕事)を好きになろう」というスローガンのようなものではなく、「個人の力を引き出し、方向性を揃えて組織の目的にそった出力を最大化していく」というような積極的なイメージがあるのではないか、ということを考えています。



次に、2.の「人/システム」について



技術トレンドには振り子のような性質があると言われます。メインフレームという「集中」アーキテクチャから、ダウンサイジングブームを経て「分散」へ、そして今(細かい技術要素としてはそれこそ分散、と言いたいところもありますが)再び企業をまたがってのより大規模な「集中」であるクラウドコンピューティングの時代がきています。



企業における業務効率化の関心時も同じような振り子的性質を持っていると考えられないでしょうか。元々は「人」がマニュアルでやっていた仕事を、技能の育成や仕事の仕方の工夫で効率を高めていた。情報技術がやってきて簡単に置き変えられるところかどんどん「システム」がその仕事を代替するようになっていく。「システム」が十分に複雑になると、今度はその中での多重投資や相互依存による非効率が問題になり、システムを「より良いシステム」で置き変えることで効率をあげることができるようになった。これはある意味で情報技術のみで完結できる仕事で、まさにSIビジネスという市場が成立した背景であると思います。



そして、そういった「システム」の世界に閉じた改善、バージョンアップだけでは十分な効果が出ない、とされる時代がきました。



そこで、今度は「人」の領域に改善余地を求めて、矛先を向けているのが、SoRからSoEへの転換と言えるのではないか。皆でモチベーション高めて一致団結していこう、というポジティブメッセージも嘘ではありませんが、個々のメンバーの能力を効率良く活用(悪く言えば、絞りとって)具体的な成果に結びつけよう、という非常に冷静なビジネス方針という面もあると考えています。



(コスト削減には限界があるので、売上を上げる方に目を向けていこう、というよくあるお話に近い、と言いますか)



最後に、「基幹系/情報系」について



SoEは、一般的な意味でいう基幹系システムではありません。従って、実際のIT投資判断の現場では、情報系の一部あるいは亜種として扱われるのが実態だと思いますし、その事は特に問題ではありません。では、なぜわざわざ新しい言葉を使いたがるのか。



1つにはマーケティング的に新しいメッセージを出していかないと注目を得られないという、商売上の都合、が間違いなくあるでしょう。もう1つには、上に書いたような、より「人」に注目することが効果を高めるという信念があると思います。そして、そのことによってフォーカスに若干の違いが生まれているのも確かです。



情報系、の主役の1つにDWH、BIあたりのソリューション群があります。実は、SoRという表現自体は元々DWHの世界から来ています。溜め込んだデータから、有意義な情報を取り出し、整理して活用しやすくするのが、これらのツールの主目的です。



ただ、SoEという言い方になると、SNSですとかコラボレーションツールの方が主役級の扱いを受けることになります。これらのツールは、(他所のシステムで生成されたデータなどを)整理するのではなく、直接雑多なデータをどんどん産み出していきます。データの発信源である、というのが、大きな違いであり、AIIMをして情報カオスという用語を作りださせた要因でもあります。






結局、長い間企業向けの情報システムの仕事をしていると、折角システムを作ってもユーザが使ってくれず「使われないシステム」として無駄扱いされる、という失敗体験が積み重なって行くので、facebookやtwitterでユーザが主体的に情報入力をしまくっている姿を目の当たりにすると、冷静ではいられなくなる、ということなのかもしれませんね。(私が、ということではなく、SoEを盛り上げていこうとしている人達の皆の心情という意味で)



(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)