2008年7月28日月曜日

アドビ システムズ社、LiveCycle Enterprise Suiteを拡張した新製品「Adobe LiveCycle Enterprise Suite Update 1」を発表

リンク: About Adobe - Press Room -アドビ システムズ社、LiveCycle Enterprise Suiteを拡張した新製品「Adobe LiveCycle Enterprise Suite Update 1」を発表.



こんにちは。aegif技術担当役員の石井です。



ミドルウェアとしての(バックエンドエンジンとしての)ECMの利用という意味でまた一つ面白い事例がでてきました。AlfrescoのOEMプログラムを活用してAdobe社が自社のPDF関係製品ファミリーを拡充しています。



実は先日、米国ワシントンDCでAlfrescoの新しいトレーニングを受講してきたのですが、そこにもAdobe社からの受講者が数名来ていました。Alfrescoのコンセプトからすると印刷禁止などのクライアント依存技術は積極的に採用されづらかったため、従来からもAdobe社製品との連携の事例はあったのですが、それがまた一つ推し進められた形とも言えるかもしれません。ECMの製品の活用方法のショーケースとしても、これからのPDF文書の管理レベルのリファレンスとしても、非常に興味深い製品であると思います。



(文責 Ishii Akinori ITC)



2008年7月26日土曜日

Alfresco Software Receives 2008 Editor’s Choice Award from Business Computing Magazine

リンク: Alfresco Press Releases - Alfresco Software Receives 2008 Editor’s Choice Award from Business Computing Magazine.



こんにちは。aegif技術担当役員の石井です。



先月の上旬のことですので、若干ご紹介の時期を逸した感もありますが、Alfrescoがまたアワードを受賞したという話題がプレスリリースで紹介されていました。



ビジネスコンピューティングマガジン(Business Computing Magazine)の2008年エディターズチョイスという賞だそうです。ビジネスコンピューティングマガジンは2005年からWeb出版の形でビジネスユーザ向けにITの情報を発信している雑誌で、毎月各種プロプライエタリのものも含めたビジネスソフトウェア、ハードウェアなどのレビューを掲載しています。最新号ではAlfrescoに対して、オープンソースのCMSの中で最高ランクのものであること、Web2.0関係の機能が充実していること、特にネガティブな要素がみあたらないこと、などが目立った特徴として記載されています。



他にはいくつかの仮想化のソフトウェアや、Spam Firewallをはじめとするインテリジェントなネットワーク機器などが紹介されており、英語圏ではコンテンツ管理がビジネスユーザ向けのメディアでも一定の存在感を持っているということがよくわかります。



(文責 Ishii Akinori ITC)



2008年7月24日木曜日

Capgemini incorporates Alfresco into the French Air Force Document Information System

リンク: Alfresco Press Releases - Capgemini incorporates Alfresco into the French Air Force Document Information System.



ごぶさたしています。aegif技術担当役員の石井です。



前回の投稿からもまたかなり間があいてしまいました。弊社としてもAlfrescoに絡んだビジネスは継続的に展開中で、近くまた色々と発表させて頂くものもある予定なのですが、そういった話題の多さが逆に一つ一つのトピックをBlog記事化するモチベーションを阻害していたようです。Alfrescoの注目度は日に日に増しているため、日本語での情報発信という意味で我々の責任も重くなってきています。このBlogだけではありませんが今後はさらにアウトプットを増大させる努力をしていくつもりです。



さて、前回からのブランクの間にAlfresco社からも何件か重要なプレスリリースがありました。これから数回にわけてご紹介していきたいと思います。



まず、第一弾ですが、キャップジェミニ社と共同でフランス空軍の技術文書センターへのAlfrescoの導入に成功しました。「文書管理機能における所定の要求水準を満たす」「オープンソースで、なおかつ各種の標準に準拠している」という二つの基準をもって製品選定をした結果、Alfrescoが選ばれた、という経緯がリンク先のプレスリリースの中で紹介されています。



「オープンソースであること」そのものが要件となっているという部分は、非常に欧州的であると感じますね。機能要件に関しては以下のようなものが列挙されています。



* 紙文書のデジタル化(別のサービスと連携)

* 空軍文書リポジトリの管理

* 電子出版と配信

* 指図の管理と計画

* 各種アクティビティのモニタリング



このプロジェクトもプロプライエタリのECM製品上に構築されたシステムをオープンソース製品(Alfresco)で置き換えていく、というやりかたで実装されています。2002年から計画されたプロジェクトで、2007年11月に第一フェーズが完了。プロジェクト全体としては2009年3月に開発を完了する予定のようです。ECM製品は重厚な追加開発をされていることが多いため、今後はこういう案件はさらに増えていくのではないかと思います。



(文責 Ishii Akinori ITC)



2008年5月30日金曜日

ECM製品の基本的な仕組み(Insight Nowより転載)

技術的な面からECM、EDMSの製品のアーキテクチャを簡単にご紹介することで、実際にそれらのシステムでどういうことができるのか(技術的な意味では、それらのシステムの内部でどういうことがおきているのか)をご紹介したいと思います。



 前稿では今現在ECM(企業向けコンテンツ管理)製品と呼ばれている製品が、かつて電子的文書管理システムEDMSと呼ばれていた製品群の系譜にあり、SOAのニーズに対応する正統進化形であるというお話をさせて頂きました。本稿では、技術的な面からECM、EDMSの製品のアーキテクチャを簡単にご紹介することで、実際にそれらのシステムでどういうことができるのか(技術的な意味では、それらのシステムの内部でどういうことがおきているのか)をご紹介したいと思います。



 今回も、電子的文書管理システムEDMSの初期製品群に多く見られたアーキテクチャから順を追って現在のECM製品のアーキテクチャまでをご紹介するという形で、EDMSからECMへの流れに沿ってご説明します。



 

初期EDMS



 当時はクライアントサーバ型のアプリケーションが全盛であったため、基本的な構造はそれにならったものになっています。各クライアントPCには専用の EDMSクライアントソフトウェアを導入する必要がありました。この方式は、すべての文書のやりとりをクライアントソフトウェアのレイヤで押さえることができるため、アクセス制御や操作記録の取得のためには有利でした。しかし、ソリューション実現のために必要な追加開発も、ある程度の部分は「クライアントソフトウエアの改修」という形で行わざるを得なかったため、保守性という意味では多くの課題を抱えていました。また、サーバ側ですが、基本的には文書の実体を保存するファイルシステムと文書の付帯情報(属性、メタデータ)を保存するデータベースの 2つのコンポーネントをラッピングした作りになっていることがわかります。データベースに属性情報専用の記憶領域を用意することで、標準ファイルシステムが持つ属性の制限(所有者、最終更新日など)に捕らわれず各文書とそれを利用する業務に必要な各種付帯情報を一括管理できる、というのが以後ECMまで続く一連のコンセプトの根幹をなしているアイデアです。この属性情報を操作することで、文書のステータス管理やワークフローなどの複雑な機能が実現されてきました。



 

後期EDMS



 このタイプは初期型EDMSが近年のIT環境の変化の中で成熟していった結果であると言えます。やはり、インターネットの影響は大きく、Webアプリケーションとしてクライアントインストールを要求しないモデルの製品が増えてきました。これにより初期のEDMSの最大の問題点であった保守性は、それなりに向上したと言えそうです。また、他の業務システムとの連携に対するニーズも高まる一方であったため、各種の「ブリッジ」「コネクタ」と言われるオプション製品が各EDMSベンダから発表されました。これらの連携ソリューションは製品設計のターゲットに近い利用形態であれば非常に強力なものとなりえましたが、連携対象とEDMS製品の双方に対するバージョン依存や利用事例の少なさからくるソフトウェアの品質の問題で広く普及するには至らなかったようです。また、これは初期の頃からも言われていたことですが、「ホワイトカラーの業務時間の80%が情報の探索に消費されている!」というスローガン(?)のもと、コンプライアンス向上だけでなく業務効率向上に繋がる機能が強く求められました。インターネットの世界での検索エンジンの台頭とあわせて各EDMS製品に実効的な全文検索エンジンが搭載されたのもこの世代の製品群の特徴と言えそうです。これ以降、前述のファイルシステムとリレーショナルデータベースに加えて全文検索エンジンもこれらの製品の柱となる要素の一つに数えられるようになりました。



 

ECM



 最後に現代の製品群のアーキテクチャをご紹介したいと思います。ご覧の通りその実態は後期EDMSとほとんど変わるところがありません。つまり、誤解を恐れずに言い切ってしまえば、EDMSからECMへの進化の過程にこれといって大きな技術的なブレークスルーは存在しなかった、ということの証左でもあるかと思います。それでも、文書からコンテンツ(=企業内の全ての非定型データ)と対象を広く捉え直しより広い範囲で単一のリポジトリを活用するモデルを提示したことと、それをSOAを背景とした標準的な手法で統合するという方法を実現したことのインパクトはそれなりに意味があるものだと思います。





 上記の「後者のSOAを背景にして」の部分は前稿からの筆者の主張でありますが、「文書からコンテンツ」のところに関しては込み入った議論がありますので、次稿にて所謂CMSとここでいうECMの違いという形でもう一度ご説明したいと思います。555_1210581101_1_2

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2008年5月28日水曜日

SOA時代のファイル(情報)管理基盤 ECMとは (Insight Nowより転載)

 ECM - 企業向けコンテンツ管理というキーワードは、ERPやCRMなどと並ぶ"ITに関するコンセプトとそれを実現するための製品群を示す言葉"として、ここ数年で急速に市民権を得たものの一つであると言えます。本稿ではECMを、SOA時代のファイル(情報)管理基盤、と位置づけ、その狙いや求められる機能などについて概説していきたいと思います。



 ECM - Enterprise Content Management、企業向けコンテンツ管理というキーワードは、ERPやCRMなどと並ぶ"ITに関するコンセプトとそれを実現するための製品群を示す言葉"として、ここ数年で急速に市民権を得たものの一つであると言えます。そのコンセプトを一文で表現するのであれば、「企業内のコンテンツを統一的なプラットフォームに集約し管理精度を向上させる」といったところでしょうか。AIIM(Association for Information and Image Management)という米国の団体では「ECM(Enterprise Content Management)とは、企業内全域に渡って、「コンテンツ」を、獲得capture・管理manage・保持store・保管preserve・配布deliverするための、技術やツールや手法のことである」という言い方をしています。



 本稿ではECMを、SOA時代のファイル(情報)管理基盤、と位置づけ、その狙いや求められる機能などについて概説していきたいと思います。



 まず、先ほどの表現における「企業内のコンテンツを」の部分から、考えてみましょう。ここでいう"コンテンツ"とは「企業内にある非定型データ」を意味しています。従来の業務システムで取り扱われるデータがRDBMSなどに格納される定型データであるのに対し、実際に企業内に存在する情報の大部分は実はWordやExcelなどのオフィスツールで作成された文書や電子メールなどの非定型データであると言われています。この非定型データを如何に効率良く管理していくか、というのが今後大きなテーマとなっていくだろう、というのがコンセプトとしてのECMの出発点です。



 次にそのコンセプトを実現するソフトウェアとしてのECM製品に必要な機能について解説したいと思います。非定型データ、という抽象的な言い回しを持ち出すまでもなく、文書というものはずっと以前から企業内に存在していましたし、その管理が大きな経営課題であることもよく知られていました。文書管理システム、電子的文書管理と言われるソリューションにはすでに数十年の歴史があります。ECMはそれらの議論の延長線上にあるものであり、ECM製品と呼ばれるソフトウェアは基本的にかつて文書管理システムと呼ばれたパッケージの機能を継承したものだと言えます。そのため、以下にご紹介する機能の多くが文書管理システムが伝統的に備えてきた機能でもあります。



「柔軟なアクセス管理機能」通常のOSレベルの読み書き権限よりも数段細やかな設定ができる製品が多いです。文書ファイル本体に対する読み書き権限とそのファイルの属性への読み書き権限を個別に与えたり、新規ファイルの作成はできるが既存のファイルは編集できないという権限や、逆に既存のファイルの編集はできるが新規ファイルの作成はできないという権限を設定することができます。また、文書毎のステータスに応じてアクセス権限設定を変更するという機能を持つものもあります。



「バージョン管理機能」各文書の過去バージョンを全てリポジトリ上に保存しておく機能です。操作ミス等による作業途中バージョンの散逸を防ぐだけでなく、コンテンツの編集経緯を共有できるというメリットもあります。



「チェックアウト・チェックイン機能」リポジトリ内のコンテンツを編集する際に他のユーザと同時書き込みを行ってしまうリスクを回避するために、あらかじめロックをかける機構です。チェックアウトの処理を実行すると、リポジトリ内の別の場所、もしくはユーザのローカルに「ワーキングコピー」と呼ばれるファイルが生成されます。そのファイルを編集した後でチェックインすることによりリポジトリ内のコンテンツのバージョンが更新されます。チェックアウトされている間、リポジトリ内のコンテンツ本体は編集不可の状態になります。



「独自属性の定義機能」業務上の要請により企業内の文書には様々な付帯情報が割り当てられています。どのような属性情報を持たせるかは文書の種類によって異なるため、多くの製品にユーザが独自に属性情報を定義する機能が備わっています。文書の種類によってアクセス権を変更する、などのコントロールを持たせることもあります。この文書の種別の特定と、管理すべき属性情報の定義は、文書管理やECMの導入プロジェクトの中でも特に重要なステップとなります。



「ワークフロー機能」各ユーザに対して「編集」「レビュー」「承認」などのタスクを依頼し、その流れを管理する機能です。予め定義された業務の流れに従って各タスクが実行されるため業務遂行の精度向上が期待できます。また、各ユーザは自分に割り当てられたタスクの一覧を常に確認できるようになります。専用の所謂ワークフローツールと違い、原則的には社内にある文書全てを同様の業務フローの遡上に載せることができるというのが、文書管理システム(あるいはECM)でワークフローを実現することのメリットであると言われています。



「監査証跡機能」リポジトリ内の各コンテンツに対して、いつ誰がどのような操作を行ったのか、を記録していく機能です。操作ログがコンテンツ管理に保管されていく形式が一般的であるようです。内部統制、コンプライアンスなどの文脈によって注目度が高まっている機能です。伝統的な文書管理システムの多くは高価なパッケージ製品であったため、強制力のあるコンプライアンスの法的要件をもつ金融業界や製薬業界での稼働事例が多く、この監査証跡機能も必須機能と認識されてきました。



 さて、ここまで挙げた各機能は、かつて文書管理システムと呼ばれていた現在のECM製品の祖先にあたるソフトウェアにもすでに備わっていたものばかりです。「コンテンツ」という用語の定義もすでにご紹介しましたので、管理対象が文書からコンテンツへとより抽象化されたのがECM製品である、という解釈をされている方もいらっしゃるかもしれません。それはそれで正しい見方であるとも言えるのですが、本稿においては表題にもあります通り、SOAの文脈を絡めた視点を提示したいと思います。



 SOA的な視座からシステム設計を考える時、そこにファイル単位の情報を保管あるいは流通させるのであれば、それらの情報の管理手法や管理精度に対してもある程度抽象的なインターフェースを提示し、他のコンポーネントとの連携方法を捉える必要があります。そこで要求される機能は、伝統的な文書管理システムが培ってきた上記の各種機能とほぼ同じものです。今までの文書管理システムは、中央集権的なリポジトリに各種文書を集約することで、各ユーザが適切な手法で文書を活用できるような基盤を提供していく、ということをしてきたわけですが、SOAの文脈においては人間のユーザだけでなく他のシステムも同様にこのリポジトリの恩恵にあずかるように方向付けていくことが求められている、というわけです。それを実現しているのが、現在のECM製品群であるといえるでしょう。(文書管理システムと他システムの連携ということ自体は以前からも積極的に行われてきたことですが、連携の方法がサービスという粒度で捉えられ、また標準的なプロトコルによって実行されるというところが相違点になると思われます)



 単純にECM製品と呼ばれるソフトウェアを導入し、重要文書から順に格納していくという方針でもコンテンツの管理精度を向上させることは可能です。しかし、本当にECMを効果的に導入しようと考えた場合は、現在あるいは将来の各ユーザと各連携対象システムのニーズに柔軟に対応できるような計画をたてて行く必要があります。基盤として活用されたときに最も効果を発揮する、という性質があるため、計画段階から慎重に導入製品を選定する必要もあるでしょう。



 次稿以降では、ECM製品の基本的な仕組み(物理的な構成要素)やWebコンテンツ管理のためのCMSと呼ばれる製品群との相違、オープンソースで実現するECMなどの話題に触れていきたいと思います。ECM導入計画の立案や製品選定などのご参考にしていただくことを目標に、順次記事をアップロードしていく予定です。



2008年5月26日月曜日

Alfresco Asia Pacific Community Conferenceに参加してきました

こんにちは、aegif技術担当役員の石井です。



先日、シドニーで開催されたAlfrescoのコミュニティカンファレンスに参加してきました。前回のパリに続いてaegifからは2度目の参加になります。アジアパシフィックエリアではやはり英語圏であるオーストラリアがAlfrescoの展開という意味ではかなり先行しており、事例紹介のトラックもかなり興味深いものでした。



パリの時に加納が書いた記事でも触れられていますが、今回も着席式でしっかりとしたランチが饗され、近くに座った人と「ネットワーキング」するという形式でした。(途中のティーブレイクとプログラム終了後のカクテルパーティは立食形式でしたが。)



参加者は、Alfrescoのパートナであり今回のホストであるLateral Minds社のメンバーや各ユーザ企業の担当者、近頃技術的な連携を深めているオープンソースDBベンダのIngresの人たちなど様々でした。特にIngresは参加人数といい、ノベルティといい、力が入っているようでした。



私はあまりこういった「ネットワーキング」的な会は得意ではないのですが、保険会社や医療関係の出版社のユーザ側の担当の方から事例のお話を聞いたり、ホストのLateral Mindsの技術者の方とRecord Managementの詳しい話を聞いたり、となかなか面白い収穫がありました。機会があればまた詳しいところをご紹介したいと思います。



(文責 Ishii Akinori ITC)



リンク: Alfresco Events - Alfresco Asia Pacific Community Conference.



2008年4月4日金曜日

企業結合会計が変わる:日本のM&A会計はどうなるのか(3)

前回、国際会計基準が定める企業結合会計は親会社説から経済的単一体説への転換がなされたということをみていきました。



今回はその他の改訂内容についても確認しましょう。その他の改訂点は公正価値による測定を一貫して行うように処理を定めたものであるといえます。







段階取得の処理



まず、段階取得の処理については過去に取得した持分の帳簿価額と公正価値の差額を損益とする処理が規定されました。過去に取得した持分が支配獲得時の公正価値により再測定されます。そのことで段階取得によって過去に取得した持分の価格がいくらであっても支配獲得時ののれんの金額が同じとなります。









従来は(日本の現行の処理も同じですが)過去に取得した持分の価格がのれんの金額に影響を与えていました。これでは過去の持分の取得の経緯によってのれんの金額が変わってしまうことになり、それが理論的でないというのが国際会計基準審議会(IASB)の主張です。段階取得でも一括取得であっても支配獲得時の公正価値が同じであればのれんの金額も同じであるべきと考えているのです。









偶発事象の評価方法



偶発事象については評価の方法が変わりました。従来偶発事象は引当金として処理されることになっていました。発生の可能性が高く、信頼性を持って測定が可能な場合に買収原価に含められていました。









改訂により、偶発事象も支配獲得時の公正価値で測定することになりました。企業結合では資産、負債を公正価値で測定するのが原則ですが、偶発債務だけ、「発生の可能性が高い」場合のみに認識するのは他の債務の認識と整合しないからです。非常に理論的ですが、実務上は偶発債務の公正価値をどうやって測定するのか、難しいところだと思います。 









取引費用の処理



取引費用というのは企業結合取引に関連して発生した費用で仲介手数料、弁護士費用、デューデリジェンス費用などのコンサルティング費用のことです。これらの費用は被取得企業の公正価値に含めていましたが、改訂により発生時の費用として処理することになりました。









被取得企業の公正価値に含めないとした理由は取引費用の金額によって被取得企業の公正価値が変わってしまうのは取引の実態にそぐわないからです。そもそもコンサルティングなどのサービスは提供を受けたときに消費されているもので企業結合取引とは別個のものと考えています。確かにコンサルティングにお金を掛けるほど被取得企業ののれんの金額が大きくなるというのはおかしい話です。 



























(文責 Yumiko Noguchi)