2011年4月14日木曜日

ソーシャルコンテンツマネジメント

先日参加したキックオフミーティングの中で繰り返し語られたキーワードに、ソーシャルコンテンツマネジメント、というものがありました。AlfrescoではSCMと略していましたが、曲がりなりにもSAP ERPのロジ関連モジュールを扱う部門に属していた人間としてはその略語はサプライチェーンマネジメントにしか見えませんでした。ソーシャルなんたらは、すべてSではなくてSoという略語にしてくれれば良いと思うのですが。


さて、そのソーシャルコンテンツマネジメントですが、ECMの次に来るパラダイムとして位置づけられていました。彼らの認識ではECM市場はほぼ飽和状態が近づいており、大手のECMベンダは皆危機感を感じている。持てる技術を適用すべき新しいフィールドを探している状態だ、ということです。その中でAlfrescoは、Alfresco Shareで手を着けていたコラボレーションの領域の先にある「ソーシャル」こそがその新しいフィールドであると定め、そこにECM技術を適用することで生まれる新しいソリューション領域をソーシャルコンテンツマネジメントと呼んでいます。(彼らは、オープンソースECMの先駆者としてスタートしていますが、「ECM」というキーワードからの脱却と時を同じくして、オープンソースというキーワードの「ハイプ(Hype)」は完全に終わった、という宣言もしていました。これは別の話題なので記事を分けて取り上げたいと思います)


Alfrescoは以前からfacebookやiGoogleとの連携実装などを発表していたので、特に目新しさは感じなかったのですが、ここでいうソーシャルコンテンツマネジメントというのは、外部のソーシャルネットワークとの連携を直接意味してはいませんでした。彼らはこのコンセプトは今準備している2つの機能強化によって実現されていく、と言っています。1つ目はShareにあるアクティビティ一覧の機能の強化です。サイト内でのあらゆる活動が、コラボレーションを効果的に促進させるようにわかりやすく表示されるようになります。もう1つは、jiveやLiferayのような「ソーシャルビジネスツール」との連携です。これらの製品は誤解を恐れずにおおざっぱに表現するならばいわゆるグループウェアをより強化し、文書作成やワークフローなどの本格的なオフィスワークを支援できる環境を実現したソフトウェアです。これらとAlfrescoをより緊密に(密結合というわけではありません)連携させることで、実効性の高いコンテンツ編集環境を生み出していくことになります。


もう1つのソーシャルコンテンツマネジメントに対する説明は、ECMが対象組織のすべてのコンテンツを統合管理できることに価値があったとするならば、ソーシャルコンテンツマネジメントでは組織外部とのやりとりもすべて対象と見なしていく、というものです。「やりとり」というところが面白い着眼点で、彼らはこれを”Content is the Conversation”と表現していました。例えばfacebookでは写真のアップロード行為そのものが他のユーザとのインタラクションの呼び水になります。コンテンツがそのまま対話の基本要素になっているわけです。もちろん、それに続くコメントの応酬もコンテンツになります。日本語では「いいね!」と表現されているLikeをつける行為、ライキング(Liking)や点数づけを行うレーティングの結果もコンテンツの構成要素です。こうした仕組みはファイル本体+メタデータというECMの基本的な情報表現と直接マッピングするよりも、専用のインタフェースを用意しそこを経由させる方が合理的だと言えるでしょう。これが、彼らの当面の技術課題ということになりそうです。


キックオフミーティングには営業担当者向けのセッションなどもあったのですが、北米市場では現実に企業内のITチームが「facebookの企業版」の必要性について真剣に検討している状況だそうです。これはやはり日本市場とはギャップがある点であるように思います。また、仮に日本でfacebookのような技術を検討するとしても、いわゆるWeb系の技術の援用で解決しようとする(それがエンタープライズ系のソリューション領域たり得るとは思わない)ケースが多くなるような気もします。その意味で、国内で今後もAlfrescoの普及に努めるために、このソーシャルコンテンツマネジメントというパラダイムをそのまま訴えるのが正解なのかどうか、懐疑的にならざるを得ない面もあります。


しかしながら、ECMにせよソーシャルコンテンツマネジメントにせよ企業内の非定型データを一定規模以上でスマートに取り扱おうとすれば、これらの技術が最も合理的であることに疑いはなく、その担い手の方向性によって我々が影響を受けるのは避けられない事態です。


そこで、今後のフォローだけでなく、ソーシャルコンテンツマネジメントに関する日本語での情報発信の土台を用意するために、半ば練習台ですがSlideShareに簡単な資料を載せてみました。まだ、うまくローカルのファイルが変換されないなどの不具合に悩まされつつではありますが、今後はこういうサイトもうまく使いながら積極的な情報発信をしていきたいと思います。



(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)