先週金曜日、Questetra クエステトラさんの矢作さんにパートナー向けのトレーニングを実施して頂きました。
営業向けセッションと技術系セッションの2本立てということでしたので、弊社側も(業務改善系などの)コンサルティングチームのリーダーやOSSコンサルティングのメンバー、それにマーケティングの人間を巻き込んで色々とお話を聞かせてもらう会になりました。
なんとなく想像はついていたことではあるんですが、やはりBPMあるいはBPMSのビジネスも「他のもっと安そうな奴」との比較にさらされるという難しさがあるようです。具体的には、いわゆる「ワークフロー」のツールと言われる、「簡易的に帳票フォームを作り、ユーザ好みの申請・承認フローに流せる」というソフトウェアとの比較、ということになります。
詳しい話はここでは割愛しますが、今回お聞きした色々な話は、我々がECMのビジネスを行う上でいわゆる「文書管理」のための国産ソフトウェアとの比較で説明に苦慮していたのと同じような構図にある、ということがとにかく印象的でした。あるいはエンタープライズポータルと「グループウェア」の比較、でもいいかもしれません。
プラットフォームかプロダクトか、という話題がLiferayのプレゼンなどにもよく出てきます。その上に独自の専用アプリをくみ上げていけるような環境を提供するのか、「箱を開けてすぐに使える」完成品を提供するのか。パッケージソフトウェアのビジネスも、実は、「パッケージ」なんだから完成品だろう、というような簡単な割り切りができるようにはなっていなかったりします。
例えば、Liferayはどちらの路線も捨てずに取りに行く、と宣言しています。プラットフォームとしての価値を確固たるものにするための技術的な努力と、「すぐに使えるアプリ」を提供していくことでエンドユーザにとっての魅力を高め導入スピードを速める努力、の両方を製造元の責任と捉えているということだと思います。
公的なマーケティングメッセージはプラットフォームとしてもプロダクトとしても価値のあるものを提供する、ということになりますが、私はより本質的な価値はプラットフォームとしての部分にあると考えています。個別のアプリケーションは、ユースケースや適用業界を絞ることでより洗練された設計と実装工数の節約ができます。(プラットフォーム指向ではない)専門アプリケーションの方が、多くの場合ではそこだけ見れば「できがよく」「価格も安い」。
ただし、それらの仕組みは新たなサイロを生み出します。
エンタープライズポータルにしてもECMにしてもBPMにしても、わざわざ「サイロを作らない統合的なシステム作り」を支援するような仕組みを大げさに持ち出すアプローチは、これまではコスト的なオーバーヘッドも大きく、プロジェクト単位の投資ではなかなか正当化が難しかった面がありますが、OSS製品やクラウドサービスの台頭によりシステム構築規模に比較するソフトウェアライセンスの金額的なインパクトが小さくなってきたことで、どうにか乗り越えられそうな素地が出来てきていると思います。
「新たなサイロができてしまうとしても、安くて導入が早いものを入れる」という判断がビジネス的に正しいというケースもたくさんあり得ます。私たちとしても単純な脅し文句として「サイロ」という単語を乱発したいわけではありません。新たなサイロが生み出す技術的な負債の評価ができているのか、ということだけが問題です。
そこで節約したコストと得られたスピードは、将来の維持コストの増大や潜在的な適用分野に関する制約(ある一定以上の範囲に広げようとすると技術的な無理が急激に増すとか、別製品への引越が必要になるとか)と見合うものなのか。
ECMやBPMなどの3文字略語の「意識高い系(? 今日的な揶揄も込めて)」は、以前はビッグベンダや大手SIerによる安心料的な高コスト体質と不可分でしたが、今では違います。コストは如実に下がっていますし、クラウドの無償プランやOSSを組み合わせて、その気になれば自社でも検証や構築ができてしまうわけです。自社のシステムを長期の視点で主体的に育てていく気があるのかどうか、ということが実質的な分水嶺になると思います。
うーん、うまくまとまらない。一番言いたいのは、LiferayもQuestetraも、プラットフォームとしての目線の高さは維持したままプロダクトとしてすぐに使えるソリューションの提供に腐心しているから、最後のとこだけ見てる人から見るとその足枷が無い(逆に言えばそのソリューション領域に専心している)ツールに対して分が悪いこともあるかもしれない。でも、この目線の高さは、思った以上にすぐにメリットとして返ってくるもんですよ、ってところなんだけど。
表題は、イギリス:牛乳 = ロシア:( )の方が良かったですかね?
それとも、オランダ:靴 = ( ):樫鳥で、ローカライズの困難さ問題に切り込むとか。
(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)