2014年10月23日木曜日

ポータルの方のMagic Quadrant

Liferay's Thoughts on the 2014 Gartner Magic Quadrant for Horizontal Portals というLiferay社CEOであるBryan CheungのポストがLiferay Blogに上がっていますね。

Magic Quadrant?

ここを見て頂いている方の多くには説明が不要かもしれませんが、Gartner恒例のマジッククワドラントという各ソリューション領域毎のベンダ評価マップとそのレポートに対応した記事です。マジッククワドラントは横軸にCompleteness of Vision(ビジョンの網羅性)縦軸にAbility to Execute(実現能力)をとった4象限のグラフに各ベンダを配置したもので、それぞれ、両軸共に優れたポジションにいるリーダー(右上)、ビジョンは優れているが実行能力や実績でリーダーに劣るビジョナリ(右下)、限定された領域で優れた実行能力を示しているチャレンジャー(左上)、それ以外のニッチプレイヤー(左下)に分類されます。

MagicQuadrantの見方

この分類においてLiferayはリーダーに位置づけられています。Liferayがこの象限に入ってからもう何年もたつので若干驚きが薄れてるところもありますが、これは実は結構凄いことです。

まず、リーダーには他にどんなベンダがいるのかを見てみると、IBM・SAP・Oracle・Microsoftと業界の4巨頭のみです。Liferayの様にポータル専業の会社は他にありません。

また、IPOで盛り上がっているという意味でも、大規模案件への対応力をしっかり示しているという意味でもこれまで以上にプレゼンスを高めているAlfrescoが、ECMのマジッククワドラントでは6年連続のビジョナリ(それだって凄いことなのですが)ということからも、オープンソースモデルの専業ベンダがこの象限に入っていることが如何に快挙であるかということがわかると思います。

昨年は、MicrosoftとIBMとOracleに対して実行能力で差を付けられた形の4位(ビジョンの評価はOracleよりもやや高かったのですが)ぐらいのポジションでしたが、今年はLiferayよりも高いスコアを出しているのはIBMだけです。

Gartnerはどんなことを言ってる?

実際には原文を見て頂くのが良いと思いますが、各ベンダの強みと脅威についてのコメントが出ています。

Liferayに関しては、この数年Javaベースのポータル製品としては最も高い成長スピードを見せているし、無償版とEnterprise版をうまく両立させているという評価がまずあります。さらに強みとして、大規模案件にも怯まず実績を積んできていること、モバイル・ソーシャルへの集中投資を続け素早い機能強化を成し遂げていること、顧客満足度が高いこと、を挙げています。

一方脅威としては、ライヴァルと比較して会社が小さい(さすがにあのラインナップでは!)こと、ユーザがオープンソースベースのアップグレードやサブスクリプションのモデルに馴染みがないことが(未だに!)あり得ること、エコシステムが拡大しているが小さい会社も多くスキルセットも分散気味(ごめんなさい!)であること、標準で提供される機能が競合に比して少ないこと、などが書かれています。

とりあえず、脅威に関しては、日本で弊社が支援しながら導入を進めていく、という意味では、特に問題はなさそうですね。(標準機能は多い方がいいですが、個々の機能についてグループウェアなどと直接戦うのにも限界がありますし)

Liferay CEOのメッセージは?

これも冒頭のリンクから原文をあたって頂くのが良いと思いますが(公式の翻訳ではないので)、幾つか面白いと思った点を紹介したいと思います。

まず、なぜGartnerのこのポータル領域のレポートにいわゆるWebコンテンツ管理製品(WCM、CMS)のベンダが名前を連ねているのか、という点についてのコメントがあります。要するに、現代の企業Webサイトは一方通行の情報発信ではなく、顧客体験にフォーカスせざるを得なくなっている。結果として、匿名のアクセスを捌くための従来型からあるWCMの機能とリアクション(分析とか追跡とか)を行うデジタルマーケティングの機能と、ユーザの登録・認証前提の体験、いわゆるポータルやカスタマーサービスのための機能の両方が必要になってきている、と。

その上で、それなら、はじめからログイン前提の使われ方(後者)の方で鍛えられてきたプラットフォームの方が有利だよね?と言っているわけですね。

次に、リーンなユーザ体験(Lean UXP)というキーワードに対してもコメントを残しています。これはちょっとまた話がそれてしまいますが、要するに、「Web配信のために素材や記事を溜め込んで、使い回したり、ワークフロー承認したり...」という従来的で重厚なCMSよりも、もっとスピードを重視しつつA/Bテストをはじめユーザの挙動を分析して露出面をどんどん練り上げていく方が大事だよね、という新しいトレンドにどう対応するか、というポイントです。これについては、その重要性を受け止めつつ、従来的なフレームワークの価値を手放さずに実現する手段として、Audience Targeting EEというアプリを紹介しています。

アジャイルな方向に攻めすぎると管理が疎かになるので、これは良い方向性だと思います。(それでも、もっとリーンに攻めたい、っていうニーズはあるかもしれないですけどね)

最後に、ポータル領域の3大シナリオ、というGartnerのニーズの整理について言及しています。パブリックなWebサイトはデジタルマーケティング、サービスポータルは顧客体験、従業員向けイントラネットは生産性と知識、と言った感じで3つのポータルのコアなユースケースに対するフォーカスポイントを示しています。このあたりは、我々が感じている顧客ニーズの方向性とも一致していると思います。

Blogの引越を試した流れで調子に乗って書いてみましたが、例によってちょっと冗長というか長すぎますね。図もないし...

(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)