Web版Office 2010の対応ブラウザはIE、Safari、Firefox。史上最大のJavaScriptアプリに(動画デモ付き) - Blog on Publickey — Publickey:
こんにちは。aegif 技術担当役員の石井です。
最近発表されたOffice 2010のWeb版ですが、これはECMを取り扱う者としてもOSSを取り扱う者としても無視できないニュースですね。ざっとみたところPublickeyの記事が一番参考になりそうだったので、冒頭のリンクはそのページにしました。
ZohoやGoogle Docsはブラウザによる編集環境だけでなくデータの保管環境や配信・共有のための基盤も提供しています。ブラウザ上に編集環境を実現したことそのものにも、プラットフォームへの依存度を下げたり、肥大化してしまったオフィススイートの再設計という意味である種の軽快さやユーザビリティを獲得したり、といったメリットがあると思いますが、それらは基本的に「データを預ける」ことと引き替えでしか手に入らないものでした。(「データを預ける」ことによるメリットもたくさんあり、配信・共有やデータ保護などが非常に大きな利点を生むと思いますが)
今回の発表によれば、Office 2010ではSharePointのオンプレミス(自社内で環境を保持することで、最近SaaSの対義語としてよく目にします)環境上でも動作するということなので、プライベートクラウド云々の議論すらスキップして、データを預けることなく上記のメリットを享受することができることになります。
もちろんベンダーロックインという問題は残りますが、コスト面さえ折り合いがつけば、魅力を感じる企業は多いのではないかと思います。Web版になる前の2007ですが過去バージョンより使い勝手が悪いという評価を受けることが多いようなので、OpenOffice.orgなどの互換製品だけじゃなく自社製品の過去バージョンとも競合するため、コスト面での評価は相当シビアになるはずですが。
しかし、編集環境自体がブラウザ上に実現し、作られた文書がサーバ上に保管される、という操作モデルがどのようにエンドユーザに受け容れられるのか、ですとか、そういった通常のファイルシステムとしての操作も許されないツール独自のデータ管理の機能だけで企業内のコンテンツ管理ニーズに対応できるのか、など気になる課題はまだたくさんあります。GoogleはGoogle Waveでそのあたりの操作モデル自体を抜本的に再定義することを提案していますが、今回Microsoftは(いつもの通り?)既存資産を活かすという、どちらかと言うと保守的な方向性を打ち出したことになると思います。(Officeが部分的にであれ無料で使えるということになれば、本来これほど革新的な話はないはずなのですが、この場合は比較相手が身軽すぎますね)
この対立は、オフィススイートというもっとも端末寄りの業務アプリの世界の革新と、SaaSモデルによるソフトウェアビジネスそのものの構造変化が、どの程度のスピードで行われるのかによって結果が大きく変わりそうです。我々も無縁ではないはずなので、このスピードを計測するための予測モデルや指標を考えないといけませんね。
(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)